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「強心剤を投与して心臓マッサージを続けてる」
「…一也、が」
「極めて危険な状態だ」
兄貴が痛ましげに眉を寄せて、だがすぐに前を向いて更に足を速めた。
「はね飛ばされた時に頭を強打してる。脳にかなりのダメージを受けたらしい」
「………」
「覚悟が必要だ」
応急室の隣の処置室のカーテンの隙間に前をはだけた上半身裸の一也の姿がちらりと見えた。
「行け。医者には話を通してある」
「あ、あ」
声が、出ない。
喉の奥がカラカラに渇き声が出ない。
足が鉛のように重い。
進もうとするのに上がらない。
それでもカーテンの隙間から見えた一也の傍へと歩んだ。
「血圧は!?」
「測定不能!!」
「呼吸は!?」
「自発呼吸なし!! spo2……78低下!!」
「おい、酸素15!マスク!」
緊迫したやり取りの影に怯えた。
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