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榊が眉をひそめて、
そしてため息をついた。
「どうせ止めても行くんでしょうから止めません。ただ、その服で行くのならやめた方がいいです。襟と袖口に血がついてます。
りおさんが気づかぬはずはありませんから」
「………」
「りおさんのことを気にされてるんですね」
「………」
「りおさんを迎えに行ってきたら、成田の診察を受けていただきますよ」
「ああ」
わかった。
仁も毅も榊もわかってる。
俺が優先すべきものがりおだということに。
「着替えてください」
少し動くと腹の中の熱が沸き上がってくる。
「く、」
「若、」
ゴボッ
競り上がってきたものをまた吐き出した。
ぐらりと傾いだ体を榊が受け止めて苦笑いする。
「…そんな体でも、りおさんのところに行くんでしょう」
「ああ」
口許の血を手の甲で拭う。
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