大神組と龍神会

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パン、パン、パンッ 「!!」 空気を引き裂く乾いた音が、耳先を、脇を過ぎる。 一瞬。 赤い花が散ったと思った。 鮮やかな赤。 カチカチカチ カチカチカチ 男が向けた引き金は何度引くも弾は出ない。 「ち、玉切れか!しくじった!!」 苦々しげに頬を歪め舌打ちをする男の後ろで、何事が起きたのかと、本屋からも、隣の電器店からも人が出てきたのが見えた。 「ちっ、仕方ねえ。引き上げだ!」 誰かの悲鳴で、じりじりと俺に迫っていた輪が崩れ、引き上げの声が上がった。 「次は必ず取るからなっ!」 捨て台詞を残し、男たちは派手な車に乗り込みタイヤを鳴らしながら散った。 ボタッ、ポタッ 両手を広げていた彼女の体から滴り落ちるのは。 ―――血。 ぐらりと影が揺れて、ゆっくりと彼女の体が傾いだ。 「おい!」 崩れ落ちる彼女を後ろから抱き止めた。 燃えるように熱くなってる体を抱き止め、彼女の顔を見た。 ―――ドクン 息苦しさに襲われて呼吸ができない。 心臓が騒いで胸を掻きむしりたくなる。 胸の底から何かが沸き上がってくる。 締め付けられるような胸の痛みが全身へと広がっていく。 「しっかりしろ!」 抱き止めた彼女から流れ出る血。 右手の指、小指が半分千切れて皮一枚でぶら下がっている。 その血がボタボタと滴り、左腕の制服にも穴が空いてそこから出血している。 「若、成田のところに運びますか?」 「頼む」 「今、一也を呼びました。あと数分で到着します」 「…待てねえ」 撃たれ千切れた彼女の指を押さえるもの。 ハンカチでもなんでもいい。 「若、これを使ってください」 榊に差し出されたハンカチで彼女の血にまみれた指を包んで縛る。 「あんたを巻き込むつもりはなかったんだ。すまねぇな」 青ざめた顔の彼女に謝ると、首を横に振った。 「みんなが騒ぎ出してます。若、どうしますか?」 「金でも握らせて黙らせろ。それより車はまだか?」 「もうそろそろ到着します」
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