大神組と龍神会

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苦しげに呼吸して眉を寄せ、ハンカチから染み出た血が滴り落ちる。 少しの動きにも敏感に反応を示す。 「若、仁と一也が到着しました。店の者には一本渡しときましたので騒ぎにはなりません。若、そのお嬢さんはわたしがお連れします」 彼女を抱き取ろうとして差し出した榊の腕を見る。 「いや、俺が運ぼう」 「…若?」 榊の怪訝そうな声。 「行くぞ」 伸べられた手を断り、彼女に負担が掛からないように包み込みゆっくり抱え上げた。 「悪りぃな、少しだけ我慢してくれ」 耳元で告げ、ゆっくりと歩き車へ乗り込んだ。 「仁はいるか?」 ベンツのウインドウを下げさせ顔を寄せた仁に声を掛ける。 「仁、俺の後ろをついて来い。前広、成田のとこに急げ」 抱き抱えた腕の中の彼女は青ざめたままだ。 出血量が思ったよりも多い。 真っ赤な液体が彼女の服や俺のスーツを染めていく。 早く医者に診せなくては。 「急いでくれ」 千切れた指も、腫れ上がった左腕も手術が必要だ。 俺を庇ったばかりにこんなケガを負わせてしまった。 彼女を見ていられなくなって目を反らした。 「若、もうすぐ成田のところに着きます」 「わかった」 顔を背け窓の外の流れる景色を見た。 「あなたのお名前は、」 ―――名前 榊が訊ねるのをじっと聞いていた。 「…天宮、りおです」 あまみや りお それが、俺の命の恩人の名だった───
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