5人が本棚に入れています
本棚に追加
いちご同盟
校舎を出ると、風がほおを打った。
湿気をはらんだ生暖かい風だ。
灰色の雲が空を覆っている。明日は雨になるだろう。
グラウンドから、打球音が聞こえてきた。
徹也(てつや)の顔を見たくなった。
電話で声は聞いたけれども、一か月以上も会っていない。
バックネットのほうに歩いていった。
グラウンドに出てノックでもしているのだろうと思ったのだが、徹也は制服のままで、バックネットのこちら側にいた。
女生徒に取り囲まれている。
徹也が女の子に追いかけ回されるのはいつものことだ。
試合を控えた練習が続いていたころは、練習一筋といった感じで、
女の子の声援を受けても無視していたのだが、
試合がなくなれば、もともと陽気な人間だから、
すぐに調子を合わせてしまう。
最初のコメントを投稿しよう!