運命

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僕が東京大学に合格できず、大阪大学に進学することになることは、始めから運命によって定められた必然であって、僕自身の選択による努力など、結果に何ら影響など与えてはいなかったのだと、そう思った。 正確に言えば、そのように考えないと、僕は自分自身が崩壊してしまいそうでならなかったのだ。 頭の隅の方で、それがただの逃げに過ぎないということは何となくはわかっていたのだが、それでもそう思わなければ耐えられそうになかったのだ。 そうして、僕は、人間の運命などはじめから決まっているものだと考えるようになった。 そう思うことで、いくらか自分自身が楽になれたのだ。 何か悪いことが起こっても、それは何も僕のせいではなく、始めからそう決まっていたのだと思えば、後悔することもそんなになかった。 そうやって、僕は僕自身における選択を次第に放棄するようになっていった。 気がつけば、僕は堕落した生活を送るようになっていた。 向上心の欠片もなく、まともな努力もしない、そんな生活を送りながら、僕はいつも自分自身に、すべては運命によって予め決められた必然なのだと言い聞かせ続けた。 結果として、周りの友人たちが大手企業に就職を決めていく中、僕は地方の中小企業に就職することになった。 だが、それも始めから運命で定められたものであると思えば、もはや悔しくも何ともなかった。
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