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そのとき僕は、次の数学の授業に備え、予備校の最上階にあるラウンジの窓際の席に座り、予習してきたノートの見直しを行っていた。
問題は横浜国立大学で数年前に出題された微分に関する問題で、決して難解なものではない。
それでも、気を緩めていると、人間はつまらないミスを犯すものなのだ。
だからこそ、問題を解き終えたことに満足せず、そこにミスが存在しないかどうかを改めて確認する必要がある。
だから、僕は数学の授業の前には必ず問題を解いたノートを見直すことに決めていた。
そして、僕がちょうどその問題の見直しを終えたとき、彼が僕の向かいにある椅子を勢いよく引いて、そこに腰を下ろした。
「君はいつも真面目に勉強しているね」
彼は僕を少しバカにするような口調で言った。
そのことに、多少なりとも不快感を感じた僕は、少しきつい口調で言い返す。
「あたりまえだろう。僕は勉強するためにこの予備校に通っているんだ。そして、来年の春には大学に入学する。予備校とは本来的にそうしたことを目的として設立されるものだ」
「ご立派なことで」
彼は僕の言葉を鼻で笑うように短く答えた。
そして、そのことが、僕の下らない闘争心に火をつける。
「君こそずいぶん授業を欠席しているみだいだが、それで大学に合格できるのかい?」
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