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だが、僕のそんな嫌味めいた言葉に対しても、彼は冷静だった。
「大学なんて、合格できればどこだっていいのさ。別に東大や京大でなくても構わない。俺には大学の名前にこだわる理由など一つもないからね」
「だったら、勝手にすればいいだろう? 君はどこの大学だって構わないのかもしれないけれど、僕は東大に行きたいんだ。僕は君の邪魔をしない。だから、君も僕の邪魔をしないでくれないかい?」
「邪魔をしているつもりはないさ。ただ、クラスメイトに話しかけてみただけさ」
「悪いが、見てのとおり、僕は勉強をしているんだ。話しかけられること自体が迷惑なんだ」
「それは申し訳ないね」
彼はそう言って、言葉を噤む。
ようやく静かになったところで、僕は再びノートに目を落とした。
だけど、彼は僕の前から去りはせず、そのまま僕の様子を眺め続けていた。
だけど、僕は無視してノートの見直しを続ける。
僕と彼の間には、妙に重たい沈黙だけが、まるで我が物顔で居座っていた。
「ねえ」
突然、彼が沈黙を破った。
「何だい?」
「君は麻雀は打てるかい?」
「麻雀? 打てるけれど、それがどうかしたのかい?」
「だったら、これから麻雀を打ちにいかないかい? 俺の行きつけの雀荘があるんだ。君は成績も良いみたいだし、一度くらい授業を休んだところで大した問題はないだろう?」
彼はそう言うと、ニヤリと笑った。
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