運命

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今にして思えば、僕がその時どうして彼について雀荘に行ったのかはわからない。 だが、その時の僕は、ほとんど何の躊躇いもなく、彼の誘いに対して、首を縦に振っていた。 雀荘では彼の友人が二人、すでに雀卓を挟んで向かい合って座っていた。 そして、僕と彼は、空いている残りの二つの席に腰を下ろした。 僕たちは手短に自己紹介を済ませると、さっそく麻雀にとりかかった。 僕は小学生の頃に麻雀を覚え、それから度々家族で麻雀を打ってきた。 同年代の人間に比べて、麻雀歴は決して短い訳ではなく、むしろ長い方だと言ってよいだろう。 それに、僕自身、麻雀というゲームが好きだたこともあり、様々な本を買いあさっては自分なりに勉強した。 そうしたこともあって、僕の麻雀の腕前はそれなりのものであり、決して弱くはない。 少なくとも、同年代の友人と麻雀を打って負けた記憶は今のところ皆無だ。 東一局、東二局と進み、次第に僕と残りの三人との間にある実力の差が姿を見せ始める。 南場に突入したときには、僕はすでに残りの三人にずいぶんと得点差をつけていた。 僕がそのリードを保ったまま、南三局に入った。 南三局も、それまでの局と同様、僕は軽快なペースで上がりへと近づいていく。 だが、僕は上がりを目前に、一つの選択に迫られた。 四索を切るべきか、あるいは五筒を切るべきか、僕は迷っていた。
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