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  「遅れてしまって申し訳ありません。 早速ですがプリントを配るので、後ろに回して下さい」 一見、特別面倒くさそうな人には見えなかった。 と言うより、これといった特徴が全くない。 中年の、優しそうな講師。 第一印象はそんな感じだった。 「はい、どうぞ」 そんなことを考えている内に、いつの間にか前の男の子からプリントが差し出されていた。 律儀に私が受け取るのをじっと待っているのは、固そうな髪の男の子。 「あ、どうも」 何となく見入ってしまい、少し遅れてそれを受け取ると。 その彼は人当たりの良さそうな笑みを浮かべて、前に向き直った。 「皆さん、プリントは手元に届きましたか? ……大丈夫そうですね。ではまず授業の概要から、プリントに沿って説明していきたいと思います」 さっきの笑顔が頭から消えないまま、講師の話に耳を傾ける。 プリントに載っている授業概要を見る限り、確かに課題は多そうだ。 二週に一回のペースで、小さなレポート提出と記されている。 俊太郎や瑞希の言った通り、この授業はなかなか手ごわいみたい。
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