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今、何がどうなっているのか。 私にはまるで分からない。 置かれたままの紙に目を落として固まっていると、私の机の上を、トントンと叩く手が目に入った。 薬指にシンプルな指輪が光る、白いけれどゴツゴツした手。 その手につられるように顔を上げれば、 「……あ」 そこには、困ったように笑う例の二人がいた。 柔らかそうな髪の彼に至っては、顔を見るのさえ初めて。 髪同様、柔らかい雰囲気をもった、優しそうな顔立ちに、何となく安心する。 さっきの手は、どうやら彼だったらしい。 そんな場違いなことを考えていると、その柔らかそうな髪の彼が口を開いた。 「すみません突然。 ちょっと聞きたいんですけど、これどうなってるんですか? 人もかなり減ってますけど、皆もう帰ったんですか?」 「……あ、はいそうです。 さっきプリントの説明が終わって、正式に履修する人だけ残ってる感じです」 簡単な説明になってしまったけど、彼らにはちゃんと伝わったらしい。 二人は、それを聞くなり大きな息を吐いてうなだれた。
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