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鞄から携帯を取り出して、それを操作しながらぼんやりと教室を見渡してみる。 評判が悪いわりに、人は多かった。 そこそこ広い教室だけど、席はそれなりに埋まっている。 この授業は全学科の生徒が履修可能だから、当然といえば当然なのかもしれない。 私たちの大学はいわゆるマンモス校で、学科も人もとにかく多いのが特徴。 だからもちろん、知らない人の方が多い。 現にこの授業も、どうやら知り合いはいないみたいだし。 ふぅ、と息を吐いて携帯をいったん机に置く。 ――その時初めて、私の前の席に座っている男の子に目を止めた。 座っていると言うよりは、机に伏せて寝ていると言った方が正しいのかもしれない。 当然顔は見えないけど、時折揺れる髪はふわふわしていて、触ったら柔らかいんだろうなーとかおかしな事を考える。 両手で頬杖をついて、その髪をぼーっと眺めていると、 「寛貴! わりー遅くなった」 一人の男の子がその人のもとに慌ただしくやってきて、話しかけながらその隣に座った。
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