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「この辺でさぁ、怪しいやつ見なかった?」
「お、お……」
男は苦しそうに腕をあげ、俺を指差した。
「……えいっ」
―――ボキリ
「ぃっでぇぇぇぇ!?」
失礼な。俺のことを怪しいやつと認識するとは。
教育のため、その忌々しい人差し指を曲がってはいけない方向へ曲げて俺から反らした。
「で、冗談じゃなくてさ。盗みとかやってるようなやつ知らねぇの?」
「し、知らねぇよ」
男は人差し指を元に戻そうとするが、痛みで上手く戻せないようだ。
見た目通りバカな男だ。折れた指を自力で直そうとするとは……
骨折したなら素直に病院へ行けよな。
「ふーん。じゃあいいや、バイバーイ」
「ケータイ返せよぉぉぉ!!」
男がそう叫びながら後ろから飛びかかってくる。
ため息をつきながら振り返り、男の腹にもう一度肘をプレゼントする。
ゴホゴホと咳をしながら倒れこみ涙目になった男を捨て置き、他に知っていそうな人を探しにフラフラと、また歩きだす。
うん。少しすっきりしたな。
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