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案内されたのは廃墟と化した雑居ビル。以前は事務所として使われたりしていたのだろうが、今は見るも無残な有様だ。
窓ガラスは殆ど割れていて、入り口にあるべきドアすら存在していない。
「ホラ、こん中だ。入れ。」
男は建物の玄関の床を外し、手招きをしている。気配を探ってみると数人がここを囲んでいる。やれやれ・・・・入らんわけにはいかんだろうな・・・・
俺が穴に入ると男も女を抱えて入ってきた。
「それで?俺をどうするつもりだ?そもそも俺は盗まれた物さえ取り返せれば満足なのだが・・・・」
「お前はよくても俺たちはよくないんだよ!」
何やらワケ有りのようだ。ここは話だけども聞いてやるとしよう。
穴の先には長い回廊があり、どうやらその先に「リーダー」とやらがいるようだ。しばらく進むと広い部屋に出た。
「・・・・・。」
部屋にいた連中が一斉に俺を睨む。どうやらあまり歓迎されてはいないようだ。
「リーダー!連れてきました!リーダー!」
「うるせぇよ鷺沼・・・・そんなに大声出すなっての・・・・」
部屋の最奥、妙に安っぽいデスクに腰掛けた男がリーダーだろう。髪は妙にウェーブしていて増えるワカメか焼きそばみたいな有様だ。
服装はくたびれた茶色いロングコートに磨り減ったローファー、無精髭と目の周りの隈のせいでひどく老けて見えるが、恐らく年齢は30代後半か40代前半だろう。
「今年で42だ。」
「・・・・は?」
気だるそうにリーダーが話しかけてくる。
「だから、俺の年齢。老けて見えるだろ?実際に老けてるから文句も言えねェやな。それと、俺の髪型は増えるワカメでも焼きそばでもねェ。覚えとけ。」
リーダーは欠伸を噛み殺しながら実にどうでもよさそうに、そしていとも簡単に俺の思考に返答した。
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