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「まずは料理長と清ちゃん探しからやな……」
暫く目を閉じていた女将の眉間にシワが寄る。
「なんや、面倒臭い場所におるわ」
料理長、清香は一緒の温泉旅館にいた。
二人共疲れた様子で机に突っ伏している。
「随分とこき使われて。まぁ、私の優しさが身に染みたやろ」
女将はクルリと回る。
銀色のフサフサ毛並みを大きく震わし、紅い目を細める。
妖狐『渡月』は、人にも神にもなれなかった成れの果て。
一際高く鳴くと、渡月の姿は見えなくなった。
残された二つの足跡。
無事に皆が揃うまで、どうか消えないで。
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