女将の足音

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「料理長……」 「ん?」 疲れ果て、机に突っ伏したままの清香が呟いた。 「空蝉に戻りたい……」 「ん……」 「女将さんと料理長とまた……楽しく……たい」 最後は掠れて聞き取れないくらいの呟き。 女将が消えてしまってから、料理長と清香は探し続けた。 どこかの宿で、いつもの様にアンコ片手に怒鳴っていないか? 神社に姿を隠していないか? 動物園に、捕まって檻暮らしを強いられているのでは? 思いつく限りの場所を探した。 女将の痕跡は全くない。 「女将さん、私達を見捨てたのかな……」 黙って熱い茶を啜っていた料理長が立ち上がる。
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