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翔ちゃんと明日菜が呼ぶ。
その声にいつもみたいな元気さはなく、たくさんの不安だけを含んでいた。
そんな明日菜を見ればいつもならば、どうしたんだと話を聞いていた。けれど今日の俺はとてもじゃないがそんな気分にはなれなかった。
むしろ帰りに見た明日菜と今の彼女があまりに違っているからこそ、余計に腹が立つ。
「今日何かあったの…?」
「…なんでそんなこと聞く?」
「なんか翔ちゃん怒ってるみたいだし…。煙草もいっぱい吸ったみたいだし……」
………煙草?
俺はちらりとソファーの方を見遣る。テーブルの上の灰皿には1本分の灰しか溜まってはいない。
そんなに吸ってるか?
俺は不思議そうな顔をしていたらしい。明日菜が控えめな笑顔で説明をくれる。
「翔ちゃんって機嫌悪いときいっぱい煙草吸うよね。……今も。灰皿にはないけど、翔ちゃんすごく煙草臭いもん…」
「あー…」
思い当たる節があって俺はなるほどと視線をさ迷わせた。
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