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テーブルにぱたりと水滴が落ちる。俯いた明日菜から零れたものらしかった。
ヤバい。泣かせた。
滅多に泣かないからこそ俺はこれでも激しく戸惑った。
なんとか元気付けないと。
そう思ったのに、俺の口をついて出たのは思ってもみなかった言葉。
「これからはそのはるとのために飯作ってやれよ。喜ぶと思うぜ、はるとクン」
どういうわけか俺の口は笑みの形のまま、そんな無責任なことを言う。
ヤバい、止まらない。
さっきまでのイライラなんてどこかに飛んでいた。ただ戸惑いと焦りが胸を占める。
言い過ぎた。
なかったことにしたい。
そう思っても、どういうわけか言うことを聞かない口はスラスラと明日菜を傷付けようと動く。
もう来なくていい。
はるとと仲良くな。
ほら、はるとんとこ行けよ。
違うのに。今言いたいことはこんなことじゃないってのに。
ぱたぱたと水滴の数が増えていく。声を抑えて泣くその姿はあまりにも痛々しい。
そうさせたのは俺だと思うと、尚更胸が苦しかった。
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