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「そう、問題は、君が私にとって排除しなければいけない敵であるらしいのだが、私には詳しい話が何もわからないと言うことだ。と言うのも、私は定期的に自分の脳から邪魔な記憶だけを削除する手術を受けている。リスクも後遺症も無い最先端の技術だ。君には言ってもわからないと思うから、それがどんな手術かは省くが、要するに何が言いたいかと言うと、昨晩に手術を受けた私には君に関する記憶が何一つ無い」
私はそこで一息つけると、新しいタバコを取り出し火をつけた。
少女は何も語らない。
ただ、震えながら私を見ているのみだった。
私は肺を満たしていた煙を外に吐き出すと、灰を地面に落とす。
音は姿を消していた。
ただ、くわえたタバコの焼ける気配と、少女の弱弱しい呼吸の空気。
そして、虚無のような静寂だけがそこにある。
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