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とあるビル街の裏道。
普段誰も使わないであろうこの道を、黒のジャンパーに年期の入ったジーンズを履いた、30代程度の厳つい男が走っていた。
ザッザッ
「ハァッハァッ」
ザッザッザッ
「ハァッハァッハァァッ!」
「くそっくそっ何で俺が……!」
男は恐怖からか、独り言を呟き始める。
「あんな奴らに関わるんじゃなかった……!」
厳つい顔は汗と涙とよだれと恐怖でぐちゃぐちゃだ。
男はそれでも薄暗い道を必死に走る。
青いごみ箱や、積み重ねられた空になったビール瓶カゴなどの障害物は目に入らないのか、そのまま蹴散らし、中は散乱、腐臭を辺りに放つ。
「ハァ゙ッハァ゙ッ、オェ…………」
男は走り疲れたのか、壁にもたれ掛かり、汚らしく息を荒げる。
「こ、こまで、逃げりゃ……良いだろ…………」
自分に言い聞かせるように呟く男。
小刻みに震えているところを見るに、自己暗示にはなってなっていないようだが。
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