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古びた民家が並ぶ平穏な景観に、不相応な状況が起きていた。
白と黒のツートンカラーで彩られた自動車が何台も並び、その中央には明らかな『異常』。
まるで別世界に切り離されたような空間に、一台の車が止まる。
ドアが開くと、中から一人の男が現れた。
歳は外見で判断するならば三○代前半。
二メートル近い背丈を、黒のスーツが包んでいる。
ただ、彼を『サラリーマン』と定理付けるには少しばかり眼光が鋭すぎた。
常人ならこの場にいることすら躊躇うだろうに、男は黙して進み続ける。
そして着いた先は、常識の反対側。
「……、何がどうなってる?」
男の目に写ったものは
「――――ご苦労様です、警部」
いつの間にか、側に制服姿の男が立っていた。
警部と呼ばれた男は、嫌気に満ちた表情をさらける。
「あんまし警部って呼ぶな。好きになれねえんだよ、それ」
「ですが……」
「んな事より、だ。……なんだこれ」
かくして『これ』と名付けられたものの正体は家――だったものだ。
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