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一昔前なら家賃三万ほどで住めたであろう瓦屋根の一軒家。
その壁には直径二メートル程の穴が空き、中の様子がとてもよく見える。
百歩譲ってこれがまだ可能性のある出来事だとしよう。
「――誰だ、コイツ」
その近く。
銀色の髪をした男がいる。
――いや、いた。
「真面目に誰なんだ、このホトケさんはよ」
後頭部に穴。
周りの砂が血を吸い、浅黒く固まっている。
「髪の色から判断して『犯罪者』……だろうな?」
「そりゃあそうでしょうよ」
制服男(仮)は軽い愛想笑いを浮かべる。
「とりあえず鑑識に回しとけ。俺はもう一つの案件に行ってくる」
「と言いますと、『死亡遊戯』ですか?」
「ああ。俺にしてみりゃ、あっちの事件の方が信じられねぇよ」
そして男は車に戻り、キーを差し込んだ。
エンジンの起動音が何度か鳴り渡る。
「しっかしまあ、妙な場所で死んでやがったものだぜ。『不必要な者達』の居住区で、とはな……」
呟いた。 ――――瞬間、僅かに。
ほんの僅かにだが、その呟きが脳裏をチカリと掠める。
「…………まさか、な」
有り得ない話だ。
そう判断し、男はアクセルを踏み込んだ。
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