必然の出会い

2/14
前へ
/32ページ
次へ
▽  夏休み。世間一般、特に学生界隈ではひたすら歓迎される灼熱の休日群。しかし、全くと言って僕にとっては、迷惑なものであった。  なんたって、あの家に一か月以上もいるなんて、とてもじゃないが耐え難いのだから。  僕はふと考える。幸せだったあの頃を。  失ったものをいくら惜しんだって仕方がないのだけれど、しかし、もし今それがあったならと考えると、なんとも晴れない気持ちになってしまう。  まあ、考えすぎは体にも心にも良くない。程々にしておこう。  といっても、家はともかく、高校も僕にとって居心地のいいものではないのだ。もしかしたら、僕の居場所はバイト先のコンビニだけなのかもしれない。  僕はなんて惨めで淋しい高校生なのだろうか。  僕は心底悲しい高校生活、もとい青春を過ごしているのだろう。これは少し今の生活を見直してみなければいけない。  ……いや、そんなこと、当の昔の何千回も繰り返している。繰り返し続けているのだ。  そんなことをしたってなんにも変わりはしない。理解しているし、体感もしている。  これでもまだ、努力不足と言われるのだろうか。言われるのだろうな、僕の零人の友人たちに。  ふう、と、僕は強く深呼吸をした。考えたって仕方がない。これも何千回の思案の結果出たものだ。  考えるな感じろとは言うが、もはやそんな余裕もない。ただ希望を求めて、ほんの偶然の重なる奇跡に衝突するまで進まなければならない。  犬も歩けば棒に当たるのだから、僕にだって可能であろう。  僕は扉を開け、一歩踏み出した。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加