767人が本棚に入れています
本棚に追加
彼女は俺の肩を掴み、椅子に引き戻した。
「さあさあ座りなさいな。動くと傷が開きますわよ」
「そんな大層な傷じゃないって」
「ところで私まだ名前を名乗っていませんでしたわね。私の名前は春野那波(ハルノ ナナミ)ですわ。どうぞお見知り置きを」
俺の話を全然聞かず、一方的にお辞儀をする春野という女生徒。「あなたは?」といいたげな目で俺を見る。
「俺は村崎龍一(ムラサキ リュウイチ)」
「では龍ちゃんとお呼びしますわね」
目をきらきらさせる女生徒こと春野。会った初日にいきなりバカップルみたいな呼び名をつけられた。まあ、もうこうして話すことも無いだろうし呼び方なんてどうでもいい。
「勝手にしてくれ。それと俺はもう行くぜ。じゃあな春野」
立ち上がろうとする俺の手を春野が掴む。
「なんだよ?」
「クラスはどこですの?」
「2ー4だけどそれがなにか?」
「まあ、では私の1つ下ですわね。私は3-5ですわ」
げっ。年上かよ……同じ学年ではないと思ってたけどまさか3年とは。
「えっと春野さん。それそろ失礼しますね」
突然敬語に変わったのがおかしいのか、春野はクスクスと小さく笑った。
「ため口で構いませんわ。それと私のことは那波と呼んでくださいな」
「じゃあ那波。俺はそろそろ行きたいんだが」
「分かりましたわ。いつまでも保健室にいてはサボリですものね。今度また、助けていただいたお礼とお詫びをいたしますわ」
「いらん。じゃあな」
俺はそう言い残し保健室をあとにした。
最初のコメントを投稿しよう!