偶然は突然に

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彼女は俺の肩を掴み、椅子に引き戻した。 「さあさあ座りなさいな。動くと傷が開きますわよ」 「そんな大層な傷じゃないって」 「ところで私まだ名前を名乗っていませんでしたわね。私の名前は春野那波(ハルノ ナナミ)ですわ。どうぞお見知り置きを」 俺の話を全然聞かず、一方的にお辞儀をする春野という女生徒。「あなたは?」といいたげな目で俺を見る。 「俺は村崎龍一(ムラサキ リュウイチ)」 「では龍ちゃんとお呼びしますわね」 目をきらきらさせる女生徒こと春野。会った初日にいきなりバカップルみたいな呼び名をつけられた。まあ、もうこうして話すことも無いだろうし呼び方なんてどうでもいい。 「勝手にしてくれ。それと俺はもう行くぜ。じゃあな春野」 立ち上がろうとする俺の手を春野が掴む。 「なんだよ?」 「クラスはどこですの?」 「2ー4だけどそれがなにか?」 「まあ、では私の1つ下ですわね。私は3-5ですわ」 げっ。年上かよ……同じ学年ではないと思ってたけどまさか3年とは。 「えっと春野さん。それそろ失礼しますね」 突然敬語に変わったのがおかしいのか、春野はクスクスと小さく笑った。 「ため口で構いませんわ。それと私のことは那波と呼んでくださいな」 「じゃあ那波。俺はそろそろ行きたいんだが」 「分かりましたわ。いつまでも保健室にいてはサボリですものね。今度また、助けていただいたお礼とお詫びをいたしますわ」 「いらん。じゃあな」 俺はそう言い残し保健室をあとにした。
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