偶然は突然に

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「嘘つけ」 先ほどのことを説明すると藤山が苦々しい顔でそう断定した。 確かに、武器を持った不良300人を一瞬で蹴散らしたと少しばかり脚色したりはしてみたが、本質は変わらないはずだ。なのに嘘と言い切るのは酷い。 「それに春野那波を助けたって? 変な嘘もいい加減にしろよ」 え? なんでそれがおかしいんだ? それにそれは本当のことなんだが。 「春野那波を知ってるのか?」 「知ってるもなにもうちの学校の生徒会長だろうが」 藤山が「馬鹿が」とでも言いたげな顔で言う。 生徒会長? 生徒会長ってあの生徒会長か? いやいや、あんな変な子が? 「嘘つけ」 「嘘じゃねーよ。な?」 藤山が横でパックのお茶をすすっている光石に促すと、光石は小さく頷いた。 「まじかよ……あんなちんちくりんが?」 「誰がちんちくりんですの?」 後ろからどっかで聞いた声がする。ゆっくり振り向くと後ろにいたのは案の定那波だった。四角いものが入った包みを2つ持ち、相変わらずの無邪気な笑顔で姿勢良く立っている。
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