偶然は突然に

2/30
766人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
高校2年生になって2週間……新しいクラスにも慣れ始めたころだ。 昨日はTシャツ1枚で充分くらいの陽気だったのに、今日はダウンジャケットが欲しいくらいの寒さである。ここ1週間は実に気温が不安定で、有名な童話のように北風と太陽が争っているのだとすれば下界の我々には至極迷惑な話に他ならない。 さて、今日は水曜日、時刻は午前10時20分。只今の居場所は学校までの通学路である寂れた商店街だ。 なぜピチピチの高校2年生がこの時間にこんなところにいるのか。答えは簡単、遅刻したからだ。 朝のHRは午前8時30分からなので既に1時間と50分が経過している。学校までは後10分ほどかかるので、2時間の遅刻となる。 しかし逆説的に考えてみれば明日のHRより22時間も早く学校に到達するということになるのでは無いだろうか…… そんなことを考えているうちに、校門までたどり着いてしまった。 県立葉隠高校――創立55年という、新しいとは到底言えないが、かと言って歴史があるとは言えない中途半端な古さの学校であり、レベルも高いとは到底言えないが、かと言って名前を書けば入れるといった学校ではない。 敷地に3つある校舎のつくりも、校庭の広さもなにもかもが中途半端な学校だ。
/95ページ

最初のコメントを投稿しよう!