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女生徒は不安そうな表情で俺を眺めている。名残惜しいが、もう行こう。3限目はとっくに始まっている。途中参加は気まずいから授業が終わるまで図書室で寝ていくことにすよう。
「じゃあな。もう危険な真似はするなよ」
そう告げ、立ち去ろうとすると「お待ちになって!」と女生徒の小さくて温かい手が俺の手首を掴んだ。
「なんだよ」
わざと怪訝な表情をしてみるが、彼女は全く気圧された感じもなく、美しい顔を俺の顔に近づけた。
「な、なんだよ」
しまった。声が完全に裏がえった。
「あなた、血が出ていますわ」
「へ?」
さっき殴られた頬をさすって手を見る、確かに血が出ていた。唇からも鉄の味がする。
「大丈夫だよこれくらい。じゃあな」
今度こそ立ち去ろうとするが、「お待ちなさい!」とさっきより強い口調で止められる。
「ちゃんと手当てをしないと駄目ですわ。さあ、おいでなさい」
女生徒は俺の手をひいてつかつかと歩き始めた。
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