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「いだ! いだだ 痛いっての!」
殴られた時の2.5倍は痛い。
保健室で俺は例の女生徒に椅子に座らせられ、消毒液をべったりつけた脱脂綿で顔の傷を陵辱されていた。
保健室の先生は何故かおらず、俺達は2人きりだ。
保健室で見知らぬ女生徒と2人きり――となれば全国8000万のアダルティなみなさんは薄い本にありがちな行為を期待されるであろうが、勿論そんなことはない。それどころか今すぐに逃げ出したい。
「静かになさいな。破傷風になるよりマシでしょう?」
彼女は聞き分けのない子供に言い聞かせる母親のような口調でそう言う。もっとも、俺は自分の母親の顔なんて知らないけど。
ようやく終わったらしい。
彼女は消毒液の入ったビンに蓋をすると、先生用の椅子に座り俺と向かい合いになった。
「あの……先程はありがとうございました!」
ぺこっと頭を下げる女生徒。
「私のせいでこんな傷を負わせてしまってなんとお詫び申し上げたらいいのか分かりませんわ!」
いや、別にお詫びなんていらないんだけどな……そんな泣きそうな顔で謝る必要もない。
「好きでやったことだから気にするな」
「そうはいきませわ! やはりしっかりとお詫びいたしませんと!」
「いや、別にいいってば」
しかし彼女は俺の言葉など聞いておらず、顎に人差し指を置いてなにやらぶつぶつ呟いている。
「お詫びと言ってもどうしましょう? なにも思い浮かびませんわ。ああもう、ここは私の体を!? いや、でもそれは……」
本人は頭の中で考えているつもりなのだろうが全部口に出ている。しかも今すごいこと言ったような。
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