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風に舞う紅葉を見詰め、輝く月を仰いだ。
今までの数奇な運命を思うと、今ここにいる自分が不思議に思う。
信頼する仲間に囲まれ、穏やかな時を過ごすなんて許される訳がないのにと。
「……本当の私を、見せれる日が来るのでしょうか…。それまでに答えを出すことが出来るのでしょうか」
紅い瞳に月を映し、風が薄紅の髪を撫でている。
月明かりの中、はらはらと舞う美しい紅葉を見詰め眩しそうに目を細めた。
答えのない問いの呟きは月に吸い込まれ、今はただ、静寂の中秋の国の風に身を委ねるようにゆっくりと瞳を閉じる。
『――私は…生きる。』
―――了。
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