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耳に届いた言葉に紅い瞳が更に見開かれ大きく揺れる。
心底驚いている、明らかにそう物語っていた。
どれほどの時が経ったのか解らないが、目の前の童は逸らすことなく男の瞳を真っ直ぐ見詰ている。
…朽ちるか―、そう思い相手に背を向け歩を進めた瞬間。
「…私が…選ぶ…?」
小さく呟く声にゆっくりと後ろへ振り返り、明らかな戸惑いの色を含ませている目を無言のまま見下ろす。
「……当たり前だ。貴様が此処で朽ちようが、我の知ったことではない。…貴様を助ける道理もない」
冷たい声音で告げる言葉に目の前の童が小さく微笑む。
かと思うと小さな震える体をゆっくりと起こす。
「……私は、……」
ボロボロの体で立ち上がると紅く輝きを増した瞳で此方を見詰めていた。
男が薄く笑みを零した瞬間、紅い瞳は揺らぎその場に崩れ落ちる。
地に伏す前に受け止めたその体は羽のように軽い。
「……ククッ、…生きるか」
童の体を持ち上げると、男は再び森の中を悠然と歩き出した。
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