プロローグ

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 御託もここまでにして、さっさと飛び降りようか。  ビルの屋上から地上を眺めると足が竦む。不退転の決意も鈍りそうだ。  しかし、今生に未練は無い。齢二十四の身空であったけれど、その半生は幸せだったと思う。次の生は幸福であることを願おう。  屋上の縁に立つべく、僕は勇気を振り絞る。そして僕は2mの緑色フェンスを越えた。  ――と思いきや……屋上の縁が凍える寒さで凍っていた。摩擦係数が限りなく小さな足元は、容赦なく僕を階下へと誘って行ったのだった。  滑って落ちたとは、口が裂けても言うまい。  ……走馬灯のように蘇る僕の記憶たち。  ……妻と子供の顔。  ……年に一度の旅行。  ……そして忌まわしき事故。  ……反対車線から飛び出して来たトラック。  ……無惨にも鉄屑となった乗用車。  ……不運にも助かった僕。  ……歪められた事故原因。  ……揉み消された事故事実。  ……取り残された僕。  現実なんてそんなものだ。期待はしない。  ただ血の後だけが僕の全てを語っていた。
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