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暗い闇を、ただ進む。
光を嫌う魔族には、到底光とは無縁だろう。
「レ…レイン…」
地の底から、うああぁぁと聴こえる唸り声にリイナが震えながらレインの袖を取った。
「ん…大丈夫だよ。まだね」
その言葉に、また恐怖が生まれる。
天使界を生きてきたリイナには感じた事もない恐怖。
「こ、これが…怖いって事なんだよね!?」
「あぁ……そうだろうな」
「レインは、怖くないの?」
「………。」
答えは返さず、レインはリイナの手を強く握った。
それに答えるように、リイナも手を握り返すと、しっとりと手に湿気を孕んでいるのが伝わる。
(レインも、怖いんだ?)
悠々と歩いていると思われても、仕方が無いだろうと思える表情をしているレインを、リイナは知れたのだと言う喜びが、恐怖感を少しだけ緩和してくれた。
「レインはここには来た事があるの?」
左右の分岐点、それに、右側にあった門に目もくれず無言で通過したのだ。
「うん。あるね」
「そう…」
その言葉を発する為にチラリとリイナを見たが、レインはそれだけで悲しげな瞳をしているように見えた。
だから…
何も聞けなかった。
聞くことが出来なかった。
完全なる拒絶ではないだろうが、心が警告音を鳴らしているような気がしたのだ。
シュンとしたリイナに今度は体の異変が襲ってくる。
何だか熱っぽさが、酷くなってきたのだ。
この悪魔の門を通ってから纏わりつく瘴気にあてられたのだろうと思ってはいたが、
息が自然に上がって来る。
レインが握り締めてた手でそれを理解したのだろう。
「少しだから…我慢できるよね?」
「うん…きゃっ!」
額に汗を溜め込んだリイナの身体を抱き上げると、レインは全速力に近い速さで走った。
人一人を抱えているとは思えない速さに、リイナが怖くなり首に手を回し、しがみ付いた
「もう少しだから、そのまま掴まってろ」
レインは目の前にうっすらと見える門へと向かった。
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