#1 機士科のお仕事

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沖縄某所 午前7時頃 森林のレンジャーキャンプ場 自衛隊の規模が拡張されたとして、比例的に設備の質が向上する……という都合の良いことはそうないものだ。むしろ、質より量とでも言うかの如く、特に備品関係はコスト最優先の質素な物に成り代わりつつある 『フォトンダイト採石施設での武力テロ犠牲者は数十人に及び、政府はこれに対し自衛隊AMW部隊を派遣、武装集団を鎮圧しました。その際に――』 ここは沖縄のとある湿地帯に立地しているボロい陸上自衛隊基地の近場にある質素なキャンプ場。元は猟師さん達が色々お仕事していたところを、自衛隊名義で借り受けた土地だ ラジオの音に合わさってどこからか聞こえるセミの鳴き声に車両と巨大な人型の駆動音、更に暑さが混ざって鬱陶しさを加速させている。まるで熱帯雨林のような陽気 『次はイギリスの対テロ政策をきっかけに発生した軍部、政府間における武力衝突関に関する新しい情報について――』 そんな"沖縄名物春なのに夏まっさかり"の悲惨な気温・湿度の中、レジャー用を一回り小さくした簡易テントの中で今し方目を覚ました少年自衛官、比野 日比野はというと 「……うーん」 件のコスト削減の被害の内の一つである寝袋の中、逆さまで収まった状態から脱するという最後の試練に挑んでいた 数日かけて行われたサバイバル訓練最終日の朝、後は撤収作業を残すのみだったはずなのだが、起床と同時に謎の追加訓練を強いられていた。もちろん、好き好んでこのような最終訓練を自身に課したわけではない まずは再度確認。姿勢、俯せで気を付けの状態。時間、恐らく朝の七時頃。原因、不明。個人的なコメント、現実は小説よりも奇なりとは良く言うもんだけどこれは酷いと思う 「……ぬぬ」 どんな経緯で、一体誰の手によってこうなったかは本当にわからないが、このままでは窒息死する危険性すらある。というか、現在進行形ですごく辛い。春先でも通気性皆無の寝袋に詰められると暑いし蒸れる 数日前に「大丈夫です!」と言ってのけたのに、こんなくだらない死因で三途の川を渡る訳にもいかないと、冷静にできるだけ急いで出口を探る
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