3人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
「ふん……」
なんとかして、出口があるであろう下側を視認しようともがくが、小柄な比野でも少しきつい使い回し支給品の女性用Sサイズボロ寝袋である――見事に首がつっかえて抜けなくなってしまい。辛さが三割増しになった
「……ぬんっ!」
なんとか転がって頭に血が上ることを避けるが、首が曲がったまま突っ掛えたため、かなり無理な姿勢にならざるを得ない。寝袋というレスラーに海老反り固め辺りの寝技を決められている気分だった
「くそ……めんどくさがって着替えなかったのが裏目に……」
訓練中は就寝時でも色々と詰まっていてかさ張る野戦服を来たまま寝袋に入っていて、そのときはもはや気を着けの状態から動けずに睡眠を取っていただが、流石にこのような状態にはならなかった。故に訓練も終わってようやく、寝るときは野戦服を脱いでも良いとなったのに、着替えすら面倒になっていた僕は「もう今日でこの寝袋ともお別れだし」とここ数日と同じように寝袋をぴっちぴちにして眠ってしまったのである
「その結果がこれだよ……!」
もうこれは誰かの陰謀だろうそうだろうとか、ちょっと酸欠で可笑しなことを考え始めている間にも、どんどん酸素が抜けて行く……いっその事、この場で霊力やら魔法に目覚めることができれば――辛さ故に可笑しい方向へ現実逃避し始めたところを、日ごろの訓練で培った精神力でなんとか現実に戻した
(待て、落ち着くんだ僕、このまま一人で騒いでいても酸素を浪費するだけだ)
一先ず、狭い寝袋の中で器用に腕を組み、そういや外から見たらどうなってんだこの状況? 寝袋が仰け反ってるのか? とか思い立った直後
「……おい」
やつ(筋肉)が現れた
「もう他の連中はとっくに起床しているぞ、お前もさっさと起きろ」
巷では朝、可愛い幼馴染に起こされるシュチュエーションとやらに憧れる同世代の男子が多いらしいが、現実はこんなもんである……まぁ、この状況下に第三者が到来するというのは、救いなのだが
最初のコメントを投稿しよう!