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がしかし、怒らせなくても長いので比野はさっさととんずら決めることにした
原も説教臭いが、剛のそれは段違いに長い上に気づけば脱線していたいなど珍しいことではないので、聞けば聞くだけ無意味になるという、悲壮感すら感じるお説教なのだ
「じゃあ僕は歯磨いてくるから後片付け任せた」
「うむ、毎日三回の歯磨きは基本だからな、存分に――」
腕を組み直して、今度は歯磨きの大切さでも語り始めるのでは……と思われた矢先、はっと我に帰った剛はいやいやいやと被りを振って
「ちょっと待て、片付けだと比野貴様っ」
「寝袋散らかしたのは剛でしょっと」
怒れる剛をささっと避けて、比野はさっさとテントから出てしまう
「待て比野! 塵取りも箒もないんだぞ!」
「今度物販にでも行って揃えればいいんじゃない? ではさらばっ」
剛の静止の声を無視し、今日限りのテントから颯爽と脱出した。後ろから野太い「おんのぉぉれぇぇぇ」とか聞こえるが、剛は真面目なのできっちり片付けてくれるだろう
生真面目な奴ほど損をするのが世の常である、と上司も言っていた
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