#1 機士科のお仕事

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テントから出て林を切り開いた獣道を進んで行くと、開けた広場に並ぶ長机と備え付けの椅子に掛けた見知った小柄な自衛官が朝食を取っていた。それ以外の人影は見当たらない ここの訓練場は敷地の問題でお世辞にも広いとは言えないので、同じ班員の姿は見えてもいいはずなのだが、いるのは彼だけである。他の班員は先に食べ終わって撤去作業をしているか、まだ寝ているかだろう。後者の場合は比野と同じでもれなく遅刻なのだが それはそれとして、いい加減空腹が効いて来た比野は水場で歯磨きと洗顔を済まし、食器とレーションを棚から取り出すと、定例通りアルビノと小柄な身体が特徴の同僚、久原 志度の隣の席に腰かけた 「おはよう志度」 「おはよう比野、とりあえずこれは寝坊したお前を待った分」 挨拶するなり、横に座った座高まで同じの比野が志度に会釈するとフォークを一閃、比野の皿から貴重な栄養源であるハムを一片もっていった 動作があまりに無駄なく素早く行われたので、比野は目で追うのがやっとだった――見れば、志度の配膳トレーはすでに空で、あたかも比野が朝食を運んでくるのを待ち伏せていたようだった 無駄とは思いつつも、とりあえず抗議する 「……志度、人のおかずを盗るなとあれほどだな」 「寝坊常習犯がなんか文句ある? 俺は定時通りに起きて、レーション用意して、食べて、お前が起きてくるまで待っててやったんだけど」
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