#1 機士科のお仕事

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声のした方……机の下を覗いてみれば、そこには小隊最年少にして、この部隊に置いては最も比野との付き合いが長い女性自衛官、浅野 心視だった しゃがんだ姿勢のまま手に持ったトレイに積まれた食事に手を付けずに、ただこちらを眠そうな半目でジーッと見据えている、まるで「待て」と言われた子犬のようだ 「おはよう、心視、どうして机の下なの?」 「おはよう……来るのが遅いから、びっくりさせようかなって……」 「随分と可愛らしい復讐心だなぁ……まぁ待たせてごめんよ。そこから出てきて座ったらどう?」 「可愛い……良い、気にしない……よいしょ」 そう言って、手に持ったトレーに気をつかいながら、器用に机の下から這い出ると、先ほどまで志度が着席していた席に座り 「いただきます」 食事の挨拶、小柄な身体とバランスが保たれていない特徴とも言える長く太い、しかし跳ね毛も枝毛もなく、黒眼ともアンバランスな金髪のツインテールを揺らしながら朝食を平らげ始める どういうわけか昔、比野と出会ってしばらく過ごす内に、朝の挨拶を済ませてからでないと食事を始めないという決まりを一部例外を除いて自分の中で定めているらしく とりあえず体調不良や不在の時以外は、比野との朝の会釈をすまさないと腹をぐーぐー鳴らしながらひたすら我慢していることになる……ある意味、比野の寝坊の一番の被害者は毎回この少女である 「……」 もぐもぐと擬音の聞こえそうな仕草で食事を頬張り、しかし無言且つ高速で大盛りの朝食を次々と口に押し込んでいる様を見ると、剛や志度には大して抱かなかった罪悪感が積もってしまう ちなみに、心視が明らかに通常の倍近い量の食事を頬張っているのは別に違法に持ち込んだりとかそういうわけではなく、ただただ基地のおにいさんおじちゃんそして比較的偉い方々が異様にこいつに甘いだけである 当たり前だが、比野が手を付けると過保護軍団に処刑される
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