#1 機士科のお仕事

16/25

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/37ページ
なんとか持ち直したらしい志度が、もうこちらを見ず、相変わらず前を見て背筋を伸ばしている剛を見て 「というかちゃんと話聞いてるのが剛さんだけってのもなんか切ないな」 「剛は部隊長のこと慕ってるからな」 周りを見渡せば、剛以外の自衛官は後ろ側では小声で談笑、前列の方からは聞えないが明らかに舟を漕いでいる自衛官が数人いる。ちなみに心視は僕の真後ろで小さい寝息を発てている。口から洩れているのはよだれと「辛い……ひー助けて……」という寝言である 別の基地の、特に都心部の方にいる同じ職種の人達がこの状態を見たら「なんだこれは」と、その余りの緩っ緩した空気に開口を辞さないかもしれない、が、ここではこれが日常なので仕方がない。前の方に座っている班長他、比較的に偉い人達もあまり咎めないし、本人らも結構いい加減だ。例として陸戦隊の古強者が言うには「仕事さえ卒なくこなせば文句はない」とのこと なお、この現状に対して、部隊長はすでに諦めているとのことで、よほど機嫌が悪くない限りは注意すらしない。そんなんなら毎朝十分以上もかけて朝礼なんて設けるなよこの髭親父、と比野は毎回心の中で思っている ……あくまで、思っているだけである。減給はされたくない
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加