#1 機士科のお仕事

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沖縄某所 正午12時頃 仮設司令部 急遽作られた陣地は、事務関係の自衛官が忙しそうに走り回っていた。主に道路の閉鎖や、数キロメートル離れた集落住人への呼びかけ(凶悪な犯罪者が潜伏している――という建前になっている)を行っている班である。件の支援科の人々が書類片手にあっちへこっちへと右往左往している様を見ると、野戦服を着た公務員とはよく言ったものだと思ってしまったりする 基地での緊急収集を受けてから二日、比野 日比野を含めた特務隊の隊員五名は、この陣地で缶詰……とまでは行かないが、待機命令を受けたまま手持ち無沙汰でだらだらしていた。たまに警戒網に引っ掛かった紛らわしいテロリスト下っ端のせいで無駄にAMWに乗り込んだりするが、今のところそれだけだった。ただし、今日は比野と心視のみ何ら指示を受けたわけでもなく、一日暇を出されている そんなわけですることがない二人はさっさと昼食を済ませ、食堂を出たところですっかり顔馴染みになった事務員に廊下ですれ違い様に会釈されて目礼を返したりしていた 事務員が食堂に入るのを見届けて、辺りに人がいないことを確認すると、比野はうんっと伸びをして心視の方へ振り向き、万が一上官に見つかったら一言叱責を受けそうな態度――俗にいう後ろ歩きで一つ提案した 「僕は外に散歩しに出掛けるんだけど、心視はどうする?」 このまま割り当てられた掘っ建て小屋ならぬ掘っ建て部屋に戻るのもいいのだが、この近くにそこそこ品ぞろえの良い菓子専門店があると聞いた比野は、心視を連れ添ってそこへ出向こうと考えていた。心視は首を傾げて少し考えるような仕草をすると、はっと何かに気づいたらしい顔で 「でーと?」 「男女二人で出掛けるだけでなんでもかんでも逢引にするのはどうかと思う」 心視はしゅんっと肩を落とした……気がした 「……じゃあ……気晴らし?」 「そうだな、それが一番近い。食後のデザートを買いに散歩だ」 今度は逆方向に首を傾げてまた少し考えて、心視はてててっと比野の隣に並んでから、少しだけ速度を落として数歩後ろへ、比野の方は、心視に合わせて歩幅を少し縮める。比野の三歩後ろを心視が続く、これが二人で行動してる時のお決まりの歩き方だった……ちなみに、世間ではそれが主にどのような意味を成す行為なのかというのは、実は比野だけが知らない
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