#1 機士科のお仕事

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ただ一つ、不満に思う事とすれば 「僕のTk-9も近接仕様なんだけどなぁ……」 適材適所故に作戦から外された心視と違って、本当の意味で戦力外として弾かれてしまった比野はひとまず封を開けた飴菓子を口に放り込んだ。甘ったるいが、どこか風味のあるそれを口の中で転がすと、嫌なことをほんのりと忘れられそうな気になる そうだ、別に僕が参加しなくたってあの三人で解決してくれればテロリストと命賭けのお付き合いをしなくて済むのだ……だからハブられても気にしない気にしない 「あの三人とTk-9なら通常動力のAMWが束になってきても何ら問題ないだろうし、僕らはのんびり喜報を待とう。うん、それがいい」 「でも……盗まれたフォトンダイト搭載機が出てきたら……?」 と、そこで心視が小声でそう呟いた……比野は一機士として思案する。フォトンダイト搭載機――その名の通り、フォトンダイトを直接動力源とし、膨大な電力による高出力、それに伴う間接部にまで至る特殊装甲を備えたそれらは、核融合炉搭載機ではとても太刀打ちできるものではない。無論、バッテリー駆動の通常機ではどうにもならない。赤子の手を捻るかのように蹴散らされることになる……それほどの相手が出てきたら? 「……もしも、そうなったら単純に詰み。投了。おつかれさまでした……ってなるんじゃないか? まずありえないけど、というかありえてほしくないけど。そこは研究職の方々のセキュリティ技術を信じよるしかないな」 そだね……と、にこりともせず言って、心視は当たりが出るまで開け続けたらしい大量のチョコレート菓子を一気に口に頬張り、リスみたいな頬でもひもひし始めた。あれだけ買ったのに当たりと書かれた袋は一つもなかったようだ 「……そろそろ、基地に帰りたいからなぁ、ほんとに頼むよ三人とも」 そんな比野の呟きは、横で盛大に喉を詰まらせ顔色を青白く変色させた心視の背中を力の限り引っ叩くことで中断させられ その愚痴塗れの思考は、口から散弾のようにチョコレート弾頭を吐き出されたが為に、急遽の清掃を強いられた事もあり頭の片隅へと収納されていったのだった
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