#1 機士科のお仕事

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沖縄某所 午後1時頃 奥港近辺の森林 奥港から数キロ離れた公道で張り込むこと八時間、運が良いことに剛と支援チームは強奪犯の一味を発見することに成功した。木々が若干開けた場所に狩場を定め、TK-9と連れの八十八式指揮通信車でそこから本の数キロ離れた密林に先回りし、熱源を最低限まで抑え上で、偽装目的のジャミングを効かせひっそりと息を潜めている マングローブの様に根を張った木々によって形成される濃い密林に身を隠したそれは、全体的にスマートなTk-7とは違い、どことなく相撲取りを思わせる風貌をしていた。今はうずくまっている為そう見えるが、良く見ればそのずんぐりした胴体からすらりと伸びる腕はTk-7とほぼ同様の腕で、頭部に至ってはアンテナの大きさ程度しか差異が無いことが解る。 『国道から不審車両が三台とそれを囲むように森の中に数機入ってきたが、TK-9のソナーはどうだ?』 指揮車からの有線通信を経て、付き合いの長いソナー要員が訪ねてきた。八十八指揮通信車にはAMWが出す全ての騒音を聞き取り、判断する耳がついている。そして、各機士毎に異なった特徴を持つTk-9の中で、剛の乗機のはそれ以上の物が搭載されていた。その答え合わせの問いに、剛は電子データを送りつつ口頭マイクに答える 「……当たりだ」 指揮車輌から数メートル上、機上の人となっている剛は、眼球だけを忙しなく動かしながら、搭載されたAIの割り出した索敵結果を確認し、有線ケーブルを介してそのデータを相方へと送信しながら答える 「ただ付け加えると、車両群を囲むように隠れているのは六機だ。そこそこにいいジャミング機材を使っているな。昼間とは言えど、堂々と装甲車で検問を実施しなくて正解だった」 『それには大いに同意だな。しっかし、いくら我が国の最新鋭機とお古の車両とはいえ、戦闘指揮車よりAMWのソナーの方が優秀とはな、ひじょーに泣ける話だ……もうお前一人でよくね?』 「馬鹿言え、何時いかなる時でも単独での作戦は危険が伴うものだ。何事も確実性をだな――」 『あー解った、解ったから無駄口はそこまでにして仕事に戻ろうぜ相棒』 『あ、おいなにすやめ――』
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