#1 機士科のお仕事

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少しの打撃音やらなにやらがして、八十八式指揮通信車両の乗組員らがソナー要員を一度黙らせると、途端に静かになった。剛は何か釈然としなかったが、確かに今は眼前の任務をこなすことが最重要の事柄なので、長々しいと自覚のない説教の内容はひとまず頭の片隅へと追いやった 『こいつには俺達が後できつく言っておくから、そっちも任務に集中しようぜ! な!』 「う、うむ」 しかし、先ほどのようにソナー要員が愚痴を零すのも仕方のないことだ。このTK-9は他の同型機と違い、そういう方面に関してかなり尖った調整が成されている。それこそ、耳を澄ましヘッドホンに顔を押し付けるなどして敵の情報を探ることを必要としないほどだ だからといって別段、同僚達や指揮車が劣っているわけではない。剛自身がヘッドホンを耳に当て続けたところで、ジャミングを効かせた敵機の位置など到底解らないし、この同僚ほどの経験と勘がなければ敵AMWの存在すら探知できないだろう 『あー、すまん剛、緊張感が足りなかった。長話は仕事が終わってからにしよう』 「なに、気にするな……そろそろ獲物が狩場に入る。そちらは手筈通りに後方部隊と合流してくれ」 『了解、近辺を封鎖しているとは言え、歩兵部隊が潜伏している可能性も有り得る。万が一にも脅威になることは無いと思うが一応、そっちが仕事を始めてから終わるまでの間、細かい探査と処理は後続とこっちで済ませるから、お前は気にせずAMWの駆除を頼む』 「任された。ここまでの協力、感謝する……今度、飯でも奢ろう」
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