プロローグ

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日本某所 午後1時頃 文化ホール ガチャリと、鉄と鉄が摺れる音が鳴るたび、身を縮める――いっそのこと殺してほしいとすら思う――周囲を武装した黒ずくめの男に囲まれ、学友と共に後手に縛られた状態で少女は緊張と恐怖から来る胃痛と吐き気にひたすら耐えていた周囲を武装した黒ずくめの男に囲まれ、学友と共に後手に縛られた状態で、少女は緊張と恐怖から来る胃痛と吐き気にひたすら耐えていた 地元では無駄に広いことで有名だった文化ホール、学校行事でそこに訪れていた中学生ら三十数名と教師数名、居合わせ係員は、いずれも後ろ手に縛られ、地べたに座らされている。その周りには銃を携え物々しい防具で身を固めた実行犯ら数名 明かりを最低限まで落とされた文化ホール。入り口に面したロビーの外、ガラス張りの向こうには鋼鉄で形成された巨大な足が二本見えていた。膝から上は見えないが、以前テレビか何かでちらりと見覚えがある……今現在、世界で最も強力な陸戦兵器の特徴の一つ、生身の人間どころか、戦車でも勝てるか解らないようなそれが、唯一の出口を見張っている 退屈な学校行事が、一変して過激なテロリズムの標的にされるなど、誰が予想できただろうか――メディア媒体でしか見たことのなかったそれが、少女らに牙を剥き、辺りにいる黒ずくめの連中が気まぐれ一つ起こせば、自分たちの命はない 「静かに、大人しくしていれば殺しはしない」 大嘘だ。先ほど、騒ぎ立てた生徒を庇った係員が撃たれ、端の方に乱暴に放られている。出血は少ないようだが、ぴくりとも動かない――先ほどまで、ここ以外の所でも銃声や悲鳴が散々していたし、上半分を隠した顔に返り血を滴らせて現れたテロリストに命の保証を言い渡されたところで、説得力の欠片もない 目の前の惨劇に、もはや色めき立つ余裕もなく皆々俯き、沈黙していた生徒達……だったが ――ぴろりん♪ 「……誰だ、今のが携帯カメラの音だということくらい解るぞ」
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