プロローグ

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先程まで門番の如く外で仁王立ちしていた人型の巨人は、丸っこい胴体をぐしゃぐしゃに潰され、その上に人の丈ほどありそうな刃物……鈍く光る刀身を持ったナイフを突き立てたまま動かない その奥、外からもう一つの巨人が姿を表した 少女らの目の前に倒れた機体よりもシャープなイメージの機体、身の丈八メートルほど、細い手足にボックス型の胴体、長方形を組み合わせて人の形を取らせたような身体に、逆三角形に横一筋のカメラアイを持つ流線型の頭部、その上にある角のような部位――ブレードアンテナが、テロリストを威嚇するようにがしゃりと音を立てて稼働した 「え、AMWだと……馬鹿な! 根回しは済んでいたはずだぞ!」 想定外の事態に動転し、罵詈雑言するテロリストなど意に介さず、その細身のAMWは胴体部から銃口の様なパーツを露出させ、スタンガンが出すような音と共に青白い閃光を撃ち放った 「がっ……?!」 閃光に打たれた黒ずくめの男が悶絶して転がる。バチバチバチと、帯電した銃口が、学生にライフルを向けた男を捉えると、また男が昏倒した。慌てて逃げようとした黒ずくめが悲鳴を上げてぶっ倒れた。巨人――AMWが暴徒鎮圧用の電気銃を向け電撃を放つ度、武器を構えようとしたり、人質を取ろうとするテロリストを次々と無力化していく 先ほどまで自分たちに銃を向け、鋼鉄の巨人を嗾けて脅しかけてきたテロリストは、別の巨人の圧倒的な力に、碌な反撃も逃走すら許されず気絶させられてしまった。銃口を胴体に格納した巨人は周辺を睥睨して残党が居ないことを確認すると、生徒たちの方へと機械音を立てながら歩み寄り、数メートル前で膝を着いた 鈍く光るアイラインに見下ろされ「ひっ」と悲鳴を上げた同級生らに示すように、自身の肩にペイントされた日の丸を、鉄の指でコンコンっと叩いて見せた それは、日本人なら誰でも知っているマーク……即ち 「自衛隊の……Tk-7?」 先ほど九死に一生を得たばかりだというのに、目の前の最新式の兵器を見て興奮した音色で言う女子が呟いた。少女はいつぞや読んだ週刊誌の一部「税金の無駄遣いを許すな!」という見出し写真に、今目の前で膝待付いている巨人が写っていたことを思い出し、目の前のそれが自衛隊だと気付いた 「た、助かったの?」 腰が抜けたまま動けなかった教師のそれに答えるように、敬礼してみせたTk-7のカメラが力強くブォンっと唸った
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