プロローグ

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日本某所 午後三時頃 某空港 「いや、急とはいえ仕事だったし、その上、日比野はしっかりそれをこなしたし、飛行機に乗り遅れた件については、自分は怒ったりはしないのだよ? キャンセル待ちでなんとかなったし」 「……にしては、どうも機嫌が悪そうじゃないですか、原さん」 「これは日比野が使ったTk-7の足回りを、これからオーバーホールして直すであろう整備仲間の怒りなのだよ」 某空港のロビー、そこで先ほどテロリストを見事に撃破し、人質となった中学生らを無事救出し、さらに裏で色々けしからんことをしていた自衛官を告発したりと大活躍した比野は、今回の遠出において、案内と移動手段の運転手をしてくれた、自分と同じ基地所属の整備士に説教されていた。ソファーの上に靴を抜いて正座である。非常に目立っているが、両者共に気にしていない 「あのねぇ、前にTk-7使ってた時も言ったと思うのだけども、Tk-7のフレームは超合金Zとかガンダニュウムで出来てるわけじゃないし、中身は精密部品の塊なのだよ? それを奇襲が手っ取り早いってだけで、アンカー使って長距離跳躍して光太郎から技を借りるのは、いささかどうかと思うのだよ自分は」 「いや……手頃な丘があったからつい……」 「その抉れた地面直す公費出すのも、現地の自衛官の方なのだよ。以後、気を付けるように」 「すいませんでした」 「うむ、後で向こうの整備班の方々に謝罪とお礼の手紙を出すのだよ」 そこまで言って、その体格の良い整備士は比野に缶コーヒーを手渡し、隣に座って自身の手の野菜ジュースを勢いよく飲み干した 正座を崩した比野も「有難うございます」と礼を言ってから、プルタブを開けてコーヒーを一口飲む。こういうときでも、好きな味の物をくれる辺りが、この口煩くて変な口調の整備士を嫌いになれない一旦である。もう説教は終わりなのか、時計を見て時間を確認し始めた原に、比野は世間話を持ち掛けた 「そういえば原さん、弟さんには会えたんですか?」 「ん? ああ、日比野と別れた後に数分だけど会えたのだよ」
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