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窓際に立ってグランドの方を見ている哲也。
そこから心地好い風が入ってくる。
「………夏まで待ってるからいいよ。大会が終わったらゆっくりしようよ」
本当は夏まで待てなくて、もっともっと2人でいたい。
けど、哲也には野球があるもんね。
「………今年は甲子園が狙えそうなんだ。去年もいいとこまでいったんだけど…吉崎先輩が怪我で試合に出れなくなっちゃって」
吉崎先輩って、葵が言ってた人だ。
そういえば、哲也と野球の話しをするのはこれが初めてだな。
「いいとこまでって?」
「準決勝で負けた。3年の先輩らと一緒に吉崎先輩もすげぇ泣いててさ…。そん時思ったんだ…。来年は吉崎先輩と絶対に甲子園へ行くって」
甲子園て、私には全く関係ないもんだと思ってたけど、
哲也の思いがひしひしと伝わってくる。
「行こうよ、甲子園!!絶対行けるよっ!!」
うちの学校のレベルがどんなもんか、他にどんな強豪校があるのか分からないけど、行けると思った。
この時は…。
「やっぱりバカと話すとスッキリするな」
「どういう意味?!」
哲也が笑ってまたグランドを見た。
そんな哲也を私は訳が分からずにプンプンしながら見てた。
きっと哲也は、
どれだけ現実が厳しいかわかってたんだね。
この頃の私は
何にも分かってなかったんだ…。
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