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◇◇◇
次の日から哲也は部活に復帰して、また毎日遅くまで練習をしていた。
季節は春から夏へ。
私と哲也は相変わらずな毎日で、
ただのクラスメートにまた逆戻り。
最近は大会前で部活が厳しいらしく、授業中も寝てる事が多い。
電話くらい…、メールくらいしてよって…、
そう思っても、あんな寝顔を見せられるとどうしても言えなかった。
窓の外はどんよりとした曇り空。
お父さんに聞いた話しによると、うちの学校はちょっと前まで甲子園の常連だったらしい。
今年、もし県大会に優勝して甲子園に出れるとしたら8年ぶりで12回目。
今の監督は、その時と同じ監督。
7年前に別の高校に移動になり、去年戻って来たらしい。
なにげに高校野球に詳しいお父さん。
お父さんも昔は野球少年だったんだって。
きっと、哲也と話しが合うんじゃないかな。
「千夏っ!何ボーッとしてんの?授業終わったよ!」
急に肩を叩かれてびっくりして振り返ったら、リィがニコニコして立っていた。
この顔は…
「次は体育だよっ!」
やっぱり。
かわいい笑顔だからすぐにわかったよ。
私までニコニコしちゃう。
「今日で最後だったよね、バレー!」
そういえば次からはグランドって言ってたっけ…。
「じゃあ今のうちに点数稼ごうっと♪」
「いいなぁ~千夏はぁ。私なんてパス練習だけで両腕がアザだらけだよ」
2人で笑いながら教室を出た。
そして私とリィは、今日も体育館に一番乗り。
先生はまだ来てない。
前のクラスが使ったのか、バレーのネットも張りっぱなしだった。
「つまんないのぉ。せっかく先生を手伝おうと思ったのになー」
リィがガッカリして座り込んだ。
そんなリィを見て、哲也の言葉を思い出した。
女もんのストール。
誰のだろう…。
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