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そして更には自分の身体をキツく抱き締め――その手は何故か小指を立て、わざとらしく身震いさせる。
「全く、こんな事を考え付いてしまうなんて……僕は自分の才能が怖いよ……!!
やっぱり天才は何をやら――――」
「――おい、そろそろ黙ってくれ」
抑えがたい何かを孕んだ静かな声。
グレンが、どこか狂気の混じった笑みを浮かべてツキの台詞を遮った。
グレンは殺気を通り越し、<鬼気(どき)>とでも呼べそうな気配。
その気配を敏感に察知したツキの頭の中で、第一種非常警報が盛大に鳴り響いた。
次の瞬間――ツキはわざとらしく咳払いをしてお茶を濁す。
そして驚いたり、紅くなったり、縮こまったりと忙しいサクラに、場の流れを変えようと話し掛ける事にしたようだ。
「コホン、コホン……んっ、ンンっ――あぁ、ところでサクラ君」
「――あ、はい、何でしょうか……?」
ツキいつも通りの落ち着き払った口調に、サクラは首を軽く傾け、若干の不審顔で聞き返す。
その表情から、普段のツキの振る舞いを察することが出来る。
「その今着ている服はあげるよ。
フルオーダーの一品物で、防御力もそこらで売ってるものよりも上等なものだからね」
ツキは極力グレンの方を見ないように会話を進める。
「いえ、そんな、悪いですよっ!! それにこの服、その……スカートが短いですし――――……」
サクラは顔をことさら紅潮させると脚の素肌が露出している箇所を隠すよう、恥ずかしげにスカートの裾をギュッと下に引っ張った。
もじもじと膝を擦り合わせ、目元を赤く染めた瑞々しい美貌が伏せられる。
「――ん? そうかい?
まぁ、それだったらしょうがないか。それだったら、レイカ君かグリム君にでも着て貰おうかな……」
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