第1章 ギルド

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 ≪Ⅱ≫  そこは電子に依って構成され、情報に依って築き上げられた仮想なる世界――【クロノス】。  グレンはダンジョンから討伐依頼を終え【王都】、この世界の中心でもある【始まり街ホルツハイム】の広場に戻ってきていた。  ひとつ息を吐いて空を見上げる。  空には真夏とまでは行かないが、現実世界と同調しその輝きを強くしている太陽エフィクトが燦然と光を放つ。  その暴力的な光は、プレイヤーである【月守 海斗(つきもり かいと)】の網膜を、【グレン】と言うキャラクターのフィルターを通して刺激する。 ――まだ夕飯まで時間はあるな。もう一個、依頼があれば済ませるか。  グレンは頭の中で大雑把な予定を立てると、何気なく見慣れた街並みを見回す。  広場から、いや広場に限らず最も目につくのは、この始まりの街中心に聳(そび)え建つ<城>であろう。  華奢(きゃしゃ)な尖塔を備える堅牢な外壁、細部には繊細かつ派手すぎない彫刻が施されたこの仮想世界唯一の王住まいし城。  そしてそんな王城を囲むように広場が設けられており、その幅は馬車3台が通れる広さで何時なんどきも大量のプレイヤーが行き交う賑やかな場所である。  今は広場の脇でギルド【風の楽団】――通称<楽団>が、壮幻で郷愁を感じさせる、どこか耳に馴染みやすい旋律を奏でていた。  広場周辺のベンチに座り、演奏に耳を傾けているプレイヤーが多数見受けられる。  グレンはその様子を横目に、目的地へと歩き出す。  【楽団】へと意識を向けながら歩いて行くと、ふと視界の端に広場に設けられた<告知看板>が目に入った。
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