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その内容は二週間後に控える【七夕イベント】を示唆するものであった。
グレンは意識の大半を、掲示されたイベントの内容に割きながら歩いていく。
ドンッ――「キャッ!?」
突如、胸元に発生する軽い衝撃。
衝突音と短い悲鳴が響き、触覚と聴覚で自分が誰かとぶつかってしまったと気付く。
慌てて視線と意識を前に戻せば、今まさにそのプレイヤーが後ろに倒れこみそうになっていた。
相手の身体だけがバランスを崩したのは、装備や体格等が影響する【重量パラメーター】の差からか。
グレンはその光景を視界に捉え、咄嗟に相手を助けようと手を伸ばす――が。
――んっ!? 女性プレイヤー!?
不用意な接触は<倫理コード>に抵触する――所謂、セクシャルハラスメント行為とみなされる恐れがある事は、この世界のプレイヤー全員の常識であった。
特に女性プレイヤーへの接触は、男性プレイヤーとは比較にならぬ程に現実と同様に顕著だ。
グレンはその事が一瞬脳裏を過った結果、伸ばした手はただ虚しく宙を掻くだけとなった。
そして当然と言うべきか、その女性プレイヤーはトスンと石畳に尻餅をつく形となる。
「す、すまないっ!!」
グレンは慌てて謝罪をし、起き上がるのを助けようと手を差し出す。
「あっ――いや、こちらこそすまない。前方不注意だった」
その女性プレイヤーは爽やかな声音でそう言葉にすると、差し出され手をぎゅっと握り返す。
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