第1章 ギルド

9/13
前へ
/628ページ
次へ
 その内容は二週間後に控える【七夕イベント】を示唆するものであった。  グレンは意識の大半を、掲示されたイベントの内容に割きながら歩いていく。  ドンッ――「キャッ!?」  突如、胸元に発生する軽い衝撃。  衝突音と短い悲鳴が響き、触覚と聴覚で自分が誰かとぶつかってしまったと気付く。  慌てて視線と意識を前に戻せば、今まさにそのプレイヤーが後ろに倒れこみそうになっていた。  相手の身体だけがバランスを崩したのは、装備や体格等が影響する【重量パラメーター】の差からか。  グレンはその光景を視界に捉え、咄嗟に相手を助けようと手を伸ばす――が。 ――んっ!? 女性プレイヤー!?  不用意な接触は<倫理コード>に抵触する――所謂、セクシャルハラスメント行為とみなされる恐れがある事は、この世界のプレイヤー全員の常識であった。  特に女性プレイヤーへの接触は、男性プレイヤーとは比較にならぬ程に現実と同様に顕著だ。  グレンはその事が一瞬脳裏を過った結果、伸ばした手はただ虚しく宙を掻くだけとなった。  そして当然と言うべきか、その女性プレイヤーはトスンと石畳に尻餅をつく形となる。 「す、すまないっ!!」  グレンは慌てて謝罪をし、起き上がるのを助けようと手を差し出す。 「あっ――いや、こちらこそすまない。前方不注意だった」  その女性プレイヤーは爽やかな声音でそう言葉にすると、差し出され手をぎゅっと握り返す。
/628ページ

最初のコメントを投稿しよう!

951人が本棚に入れています
本棚に追加